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作家・ゴトーヒナコさんが描く世界と物語、 その10年の軌跡を振り返る。

2025.1.30 up text/菊地詩乃

作家・ゴトーヒナコさんが描く世界と物語、 その10年の軌跡を振り返る。

2014年より作家活動をスタートして約10年。
作家・ゴトーヒナコさんのこれまでの活動を代表する作品100点を収録した作品集『ゴトーヒナコ作品集 Works 2014 – 2024』をondoより発行しました。その発行を記念し、ondo galleryにて出版記念展を開催。会期中にゴトーさんと、今回の作品集制作に携わったondo代表の池田、ondoデザイン室の阪口を交えたトークイベントを開催しました。当日のレポートとして、お話しいただいた内容をまとめました。

-10年の作家活動で生まれた意識の変化-

ゴトーさん「2024年で活動10周年を迎えました。それ以前から絵を描いて発表していましたが、現在のスタイルが確立し、Twitter(現X)で今のアカウントを始めた頃を一区切りとしています。
日常生活で感じたことや思ったことを受け止めきれなくなった時に絵を描くことが多く、それをSNSで投稿していたら少しずつ共感してくださる人が増えていき、気付いたら10年経っていた、という感じです。
この10年間は辛いことも良かったことも沢山ありましたが、その中でも自分にとって一番大きかった出来事はコロナです。友達と会えない時間が増え、好きなお店もどんどんなくなってしまうことが続き、本当に気持ち的にしんどかったです。いつ終わるかわからないという状況に漠然とした不安を感じ、見てくれる人の気持ちが落ち着く、どこか現実から遠ざかったような絵を描きたいと思いました。
また、コロナのタイミングでちょうどイラスト塾(青山塾)に通い始めたこともあり、今までは自分との対話だけだったものが、他者を意識し始めるという変化もありました。」

  • 作家・ゴトーヒナコさんが描く世界と物語、 その10年の軌跡を振り返る。
    ゴトーさんを囲み、暖かな雰囲気で開催されたトークイベント。
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    制作や作品集について語るゴトーヒナコさん。
  • 作家・ゴトーヒナコさんが描く世界と物語、 その10年の軌跡を振り返る。
    ondo代表の池田とondoデザイン室の阪口(大阪の事務所からオンラインで参加)
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    今回の作品集の中からセレクトした作品をジークレープリント作品として展示。

-2人のキャラクターの「曖昧さ」に乗せる想い-

ゴトーさん「作品中に登場する2人のキャラクターについてよく質問をいただきますが、詳しく説明しようとするとなかなかぴったりな言葉が見つかりません。
でも、一貫して自分の中にあるのが、「属性をなくしたい」という気持ちです。これはこの世なのか、あの世なのか…などなど、全部曖昧にしたい気持ちがずっとあるんです。
なので、明確に決まっていることはないのですが、あえて言えば、「人間」と「人間じゃないもの」を描いているイメージがあります。過去に自分が「天使ちゃん」と呼んでいた金髪のキャラクターは、人とは違うけれども、似ているものとして描いていています。自分と他者の在り方や距離感みたいなものをキャラクターに乗せて、自分が思っている他人と、その他人に寄り添う何か、というものを描いているんだと思います。
ちなみに、ヒヤシンスのお花の部分と、根っこの部分をキャラクター化したものとして、この2人を描き始めたのが最初です。花と根っこで見た目が全然違うため対極にも思えるのに、双方を支え合っているのがカッコ良いと思いキャラクター化しました。それから、人と人はどう関わって生きていくんだろうと考えているうちに、今の2人に乗り移っていったのではないかと思います。
最近はキャラクターが笑っていたりと表情を持ち出したんです。きっかけはondoさんで初めて漫画(comixシリーズ「星のゆくえ・人の旅」)を描いたあたりからで、魂を持ち始めているような感覚があります。次にこの2人はこういうところに行くんだろうな、みたいなこともわかってきたような気がしています。

また、コロナ前まではコピックを中心に絵を描いていましたが、褪色しやすい特性に悩んでいたタイミングでイラスト塾の先生にアドバイスをもらってからアクリルに変わりました。より表現の幅が広がったような気がします。今までは薄く重ね塗りで描くことが多かったのですが、最近は厚めに塗って描く作品も制作していて、今後はそのような表現もできたらいいなと感じています。」

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    ゴトーヒナコさんの作品に登場する2人のキャラクター(作品「ぜんぶ夢のまま」)
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    幻想的な世界で同じ時間を過ごす2人(作品「空は透明」)
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    2人の表情の変化(作品「氷は溶けて」)
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    コピックを使用していた頃の作品(作品「楽園を追い出されたがまだ生きてる」)

-ondoデザイン室から提案し制作がスタートした作品集-

活動10周年のゴトーさんと何かモノづくりができたら、という想いからondoより提案し、製作することになったという今回の作品集。
今回は、特装版と通常版の2種類を作りました。
特装版は、手に取った時の厚みとずっしり感で、ゴトーさんの10年の積み重ねを再現するためにドイツ装を採用し、表紙まわりは阪口がすべて手作業で作っています。通常版は、特装版よりももう少し手軽に手に取ってもらいたいという思いで制作しています。絵を額装するようなイメージを表現するために、冊子にスリーブをつけるという一手間を加えました。
また、特装版と通常版が対になるような感じで、特装版の帯と通常版のスリーブの印象的な色味を合わせています。光の表現が美しいゴトーさんの世界をイメージして、特色メタリックを採用しキラキラとした感じを表現しました。

-ゴトーさんの美しい色彩を表現する-

特装版と通常版で中の内容や構成は同じになります。
本文については、色味にとてもこだわっています。通常の印刷だとどうしてもゴトーさんの魅力的な色彩が表現できないと思い、広色域かつ高精細な表現が可能なRGB印刷を採用しています。
また、構成については、2024年の最新のものから始まり、ページをめくるたびに過去の作品に戻っていくという、流れで掲載しています。2024年の作品から始めるか、2014年の作品から始めるか迷いましたが、ゴトーさんはこれからも続いていく作家さんなので、最初に開いたページが最近の作品がの方がしっくりくると思い、そのような構成にしています。

-収録している100点の作品のセレクトについて-

ゴトーさん「ほぼ毎日絵を描いていたので、作品数はもっともっとあるのですが、沢山の人が見てくれることを意識して、割と今のスタイルに繋がるものをセレクトしました。
セレクトする作業は、その絵を描いた時の状況や、その時周囲に何があったかなどを走馬灯のように鮮明に思い出せることが多く、面白い作業でした。」

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-これからの展開について-

出版記念展の営業時間後にギャラリーで開催した今回のトークイベント。
ゴトーヒナコさんの物語や作品を優しく紐解いていくような感覚が、冬の静けさが深まっていく夜にぴったりで、とても心地よい時間となりました。
今回のトークイベント経て、改めて作品集を手に取ることで、ゴトーヒナコさんの10年の軌跡を手触りなどの感覚からも感じながら、作品の中に広がる物語への想像の膨らみを楽しむことができました。
また、ondoは今後も『ゴトーヒナコ作品集 Works 2014 – 2024』や出版記念展で展示したジークレープリント作品、そしてゴトーヒナコさんの魅力を、国内外の各地に広く繋げていけたらと考えています。
出版記念展の巡回展、本作品集を中心としたポップアップなどを開催いただける店舗様を募集しておりますので、ぜひお問い合わせ(https://ondo-info.net/contact/)ください。

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『ゴトーヒナコ作品集 Works 2014 – 2024』〈通常版〉
サイズ:B5変形(182×245㎜)/仕様:並製本・スリーブケース入/本文124ページ
販売価格:¥2,970

『ゴトーヒナコ作品集 Works 2014 – 2024』〈特装版〉
サイズ:B5変形(182×245㎜)/仕様:ドイツ装並製本/本文124ページ
販売価格:¥4,400
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発行日:2025年1月10日
著者:ゴトーヒナコ/発行者:池田敦(ondo)/ブックデザイン:阪口玄信(ondoデザイン室)

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